【地域農業の取り組み紹介】
よみがえった伝統ゴボウを地域の特産へ 養護学校生徒とともに一歩
「東寺献上ごぼう復刻プロジェクト」、養護学校と協働で袋栽培に挑戦
(写真=種を播く生徒と教える窪田さん 湖南市丸山 滋賀県立三雲養護学校石部分教室校内畑)
滋賀県湖南市の伝統野菜『東寺献上ごぼう』を特産として復活させようと目指す『東寺献上ごぼう復刻プロジェクト』が、はじめて滋賀県立三雲養護学校石部分教室農業班の生徒らと協働して袋栽培に挑戦しています。5月8日、同校の校内農場にて、高校2年生・3年生の生徒5人がゴボウの種をまき、地域の伝統野菜を守ると同時に、特別支援教育の現場での実践的な学びの機会として新たな一歩を踏み出しました。
同プロジェクトは、かつて湖南市の旧石部町東寺地域で盛んに栽培され、昭和3年に昭和天皇の大嘗祭(だいじょうさい)に献上されたことから名がついたとされる『東寺献上ごぼう』の復活を目指すものです。自家消費用に数軒の農家が栽培するのみとなっていたところ、移住者の窪田匡希さんが代表となって2020年から農家と協力して栽培し、同市内の福祉作業所と連携してゴボウ茶などの加工品を開発・販売してきました。
しかし、ゴボウは掘り起こし作業が重労働であることと、最低5年は連作ができないことから、生産者や生産量が思い通りに増えず、原材料が確保できないという課題に直面していました。そこで今回の協働では、実験的に掘り起こしの負担軽減のため、土のう袋や肥料の空袋を使った『袋栽培』で育てる方法を採用しました。生徒らは袋に圃(ほ)場の土と肥料を入れた後、1袋につき種を13粒播き、乾燥と病気を防ぐためにもみがらを敷きました。生徒は「どんなゴボウになるか、収穫が楽しみ」と話しています。
使用した袋は土のう袋20袋と肥料の空き袋16袋の計36袋で、収穫は秋頃を予定しています。掘り起こしが簡単にできて収穫量が多ければ、新たな生産者の獲得が期待できます。
同学校では社会に出て働く力を身につけるため、授業のカリキュラムとして農業班に所属する生徒らが毎週10時間の農作業を行っています。
窪田さんは「ゴボウ茶の原料に使うので、長さにこだわらず育てやすさを優先した。伝統の継承のために、まずは同市でゴボウを作り続けているという現状を広めたい」と話します。また、「袋栽培が広まり、同市の新たな特産品になればうれしい。この小さな種まきが、ゴボウのように、まっすぐに地域へ根を張るよう、活動を続けていきたい」と力を込めました。
今後は、ふるさと納税の返礼品としての展開や、ハーブティーとしての新たな商品化も検討しており、ゴボウを通じた地域活性化と福祉の連携に注目が集まります。